人は痩せられる。

と、思う。たぶん、きっと。がんばる。

断食6日目(最終日) 愛犬ペスとキラリと光るモノの正体

『世界は驚きと奇跡に満ちている。』

今さら語るにはあまりにも有名な出川哲朗のこの言葉。

すべてじゃないにしろ、凡人なりにさまざまな経験をしながら人生を過ごしてきた僕としましては、多少の驚きや奇跡では動じないつもりでおりましたが、まさか自分自身にこんなことが起こるとは。

断食6日目、朝。

空腹からくる頭痛や苛立ちを乗り越え無我の境地にたどり着いたのもつかの間、やはりこれまでの長い人生でエリート肥満として育み、そして培ってきた「食」への渇望は相当なものでした。

現実世界では朝晩に薄めたトマトジュースしか口にできないものだから、ついに夢の中でキャミソールとショートパンツを着た鈴木奈々と非常に仲良く「おいしいね!」「うん。おいしいね!」とか笑顔でいいながら、公園のベンチでお弁当に入っている鶏のから揚げ(ザンギ)を食べるデートの実現に至りました。

前々からザンギと前戯には目がありませんでしたが、まさか食欲が夢の中まで侵食してくるとはもはや脳みそも限界かもしれません。しかも断食してからというもの、頭が超絶冴えているので非常に鮮明に夢の内容を覚えているという変化も少し奇妙な感じです。夢の中でも僕は太っていました。(当たり前)

ところで、こんな夢を見るまではまったくと言っていいほど意識したことのなかった俺の奈々のことだけど、結果の伴わない断食6日目という体力的にも精神的にも追い詰められた末期的状況では、深津絵里でも長澤まさみでも白石麻衣でもない、あんな擦れたローション女芸人風情であっても、晴れた日の広い公園のベンチで一緒に楽しく仲良くお弁当を食べた間柄となると、まぁ、奈々の方からどうしてもって言うなら付き合ってやってもいいんだぜ!みたいな気分になりますよね。男ってホント不思議です。ジェラートピケ的キャミソール&ショートパンツ、素敵でした。

 

さて話は終わりません。

好きでもない女子から告白されてどうしたらいいかわからないけれど、もしかしたら僕もちょっと好きかもしれないと勘違いを始めた童貞の気持ちと昨晩の寝汗をシャワーで同時に洗い流したあと、少しでも体重を軽くしてやろうと全裸のまま体重計にのったものの、期待とは裏腹に昨日と代わり映えしないデジタル表示にうんざり。数字にとらわれてはいけないと理解しながらも、苦労に見合った見返りを求めてしまうダメさ加減もまた、断食が気づかせてくれます。

髪が濡れている分だけ重くなった。などと、どうにか自分を納得させる理由を探していたところMy小隊長(肉棒、ムスコ、おちんちんなどとも言う)付近にキラリと光るモノがあった。

こ、これは?

 

小学生の時の作文コンクールに提出した、おばあちゃんと愛犬ペス(柴犬の雑種)との日々をつづった作品。

我ながらこれはよく書けたぞ。すごいぞ。天才。と思っていたのだけど、結局は佳作にも引っかからなかったその作文を、普段はヨボヨボで目が開いているのか閉じているのかよくわからない国語の先生が、汚れたメガネ越しにキリッと真顔で「あなたには光るモノがある!」と褒めてくれたのをよく覚えている。子どもながらにとても嬉しかった。

残念ながらそれを最後にして現在に至るまで一度も光り輝くことのなかった僕の人生で、何十年ぶりかに光ったモノ。それは白髪のちん毛だった。

衝撃だった。

気のおけない友人からはお前にもいつか来るぞ!突然来るぞ!と受信料の徴収みたいに言われてはいましたが、言葉を失い唖然とするとはこのことか。恋でも無いのにスリル、ショック、サスペンスです。

頭髪に白髪が目立つようになってきても、あごひげに白髪が混じっていても、乳首から生える謎のロン毛を発見しても、こんな気持にはならなかった。いま実際にここにあるキラリと光る陰の毛を人差し指と親指でつまみながら、老いという現実と言い表せぬ感情が矢のように心に突き刺さっています。ぶっ刺さっています。

 

光陰毛矢の如し!【コウインモウヤノゴトシ】

月日が経つのは早いものですね先生。

 

散歩中にリードを離してしまい逃げ出したペスに追いつけず、おばあちゃんとふたりで一緒に探し回った。いつもの公園、小学校の校庭、ペスの友達のゴールデンレトリバーのおうち、暗くなるまで必死に探しても見つからず、自分のせいだと泣きじゃくる僕。そんな僕の手を、「きっとだいじょうぶよ。」と言いながらおばあちゃんがずっと握りしめてくれていたこと。

探し疲れて泣き疲れておばあちゃんに連れられ家に帰ると、玄関にはしっぽをブンブンと振り回し、舌を出した笑顔のペスがワンワンと吠えている。急に安心したのかまた大声で泣き出す僕の涙をペスがぺろぺろと舐めながら出迎えてくれたあの日の物語。

先生。あの時あなたが言った光るモノとは、作文の内容ではなく数十年後のコレですか?予言ですか?

しばし股間で光るそれをまじまじと見入り、ひっぱたり、撫でたり、愛でているうちにやっと心が受け入れたのか、落ち着きを取り戻した僕は心にぶっ刺さった矢と一緒にお股から光陰毛を抜きとりました。そのタイミングでタマ裏の方にさらに2本発見してどうでも良くなりました。さようなら。

 

余談ですが、愛犬ペスの脱走事件から約10年後、今度はおばあちゃんのほうが夜な夜な脱走するようになり、ペスと一緒におばあちゃんを必死に探すという既視感たっぷりのまさかの展開。歴史は繰り返す。

幸いすぐに近所の用水路沿いに佇むおばあちゃんをペスが発見。さすがにおばあちゃんはワンワンと吠えていませんでしたが、少し大人に成長した僕は他人行儀なおばあちゃんの手をしっかり握りしめて、しっぽをやさしく振るどこか得意げな老犬ペスと短い帰路につくのでした。

 

そんなこんなで断食おしまい!明日はカツ丼!

受信料は払おう。

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